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古い鋳鉄製ラジエーター |
アイルランドの住宅内を見て最初に目についたものは、暖房(ラジエーター)でした。私の通った高校の旧校舎では、このタイプで鋳鉄製の暖房を使っていましたので、とても懐かしくなりました。今日の日本ではあまり普及していませんが、ヨーロッパでは一般的なセントラルヒーティングシステムで、デザインもシンプルかつモダンになってきています。このラジエーターは各部屋・廊下・バスルームとあらゆる箇所に設置され、ボイラーの熱で暖められた温水(熱源)がポンプによって循環され、ラジエーターで放熱されます。
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バスルームのタオル用ラジエーター |
ラジエーターの利点は、ストーブほど高熱にはならないので火災や火傷の危険が少なく、ラジエーター自体からは燃焼ガスの発散がないので安全性に優れます。大きな音を出すこともなく、ホコリを巻き上げることもありません。また、部屋を出ても廊下やバスルームが暖かいのはうれしいですね。バスルームのラジエーターはタオルが掛けられるようになっているものが多く、タオルがすぐ乾くように工夫されています。しかし、大きなものだと場所も取りますし、古いタイプのものはアコーディオンカーテンのような鉄の塊がむき出し状態だったりで、見栄えの面でのディメリットがあります。
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リビングルームの暖炉 |
そして、ほとんどの住宅では、リビングルームには炭やガス等を使った暖炉があります。マンションでも煙突があれば各住戸に暖炉があるということになります(主に低層の古いマンションです)。ガスを使った暖炉は、点火も消火もワンタッチで、燃料補給やすすの発生もなく、ガス供給のある都市部では好まれています。ガス供給のない小さなタウンや田舎では炭やピート使用というオプションになり、農場では主に薪が使われています。暖炉はとても暖かく、家族が集まる場所ということで、どの家庭も暖炉(メインのインテリア)の周りをかわいく飾りつけし、家族の写真などを飾っています。また、高層のマンションでは本物の暖炉を設置できなくても、電気を使った暖炉風ヒーターも使われています。暖炉を取り入れた住空間は、欧米諸国での伝統的なスタイルなのですね。
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屋根には煙突があります |
北樺太と同じ緯度(北緯51度から55度)に位置するアイルランドは、真夏の最高平均気温が18.5度という涼しい国です。なので、冬はとても寒いのではと思われがちですが、暖流のメキシコ湾流のおかげで、平均気温では東京より2度低い程度で、雪はほとんど降りません。山がないのでスキー場もありません。しかし冬の始まりが早くて終わりが遅く、真冬の日照時間は短く雨ばかりなので、視覚的な寒さを感じます。夏でも涼しいため、各部屋に冷暖房を備えた家庭用エアコンは必要なく、電気を使った局部的なヒーターは売られてはいますが、電気代が高くなるという理由からあまり使われません。
光が丘の住宅には熱供給からの熱を利用した暖房と給湯設備が設置されていますが、これはまさに街レベルでのセントラルヒーティングシステムとも言えますね。寒くて長い冬を快適に過ごすために、国レベルで暖房の発展に勤しんできた近代ヨーロッパ文明の賜物ではないでしょうか。次回も住宅設備パート2をお伝えします! |